冷たい奴だよ

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実家の猫が、もうダメなのだそうです。

最近はめっきり老け込んでいて、
ある程度はやっぱり覚悟していたつもりではいたんですが…


うん、やっぱりいざこういう時が来ると、さすがにちょっとね。


自分が拾ってきた猫だったんですよ。
拾ってきた、というのが正確かどうかはわかりませんけども。

もう15年くらい前になるんですかね。
当時は中学上がったばっかりだったかな。通学路に近道があってね。

そこにノラ猫がいたんですよ。
んでチビッ子がノラ猫の子を抱いてて。

あ、猫だなー、とか思いながら横を通り過ぎようとしたら、
そのチビッ子の親らしきおばちゃんから声かけられて。

「おニイちゃん、猫好き?!」って。

まぁ猫好きなんでね。
好きですよ、つったらその子供が抱いてた猫を押し付けられて。


じゃあ連れて帰って、と。


なんじゃそら、ですよね。
まぁ、そこで連れて帰る自分も自分なんですが。

今から思うと、チビッ子が飼うっつって聞かなかったのかなー、と。
そんでとりあえず別の人に押し付けてその場を乗り切ろうとしたのかな、と。

どうなんだその教育方針、と思わなくもないですが。

まぁ、それが無けりゃ彼はウチに来なかったんでね。
結果としてはよかったんじゃないか、とは思いますけどね。


連れてきた当初は、夜になる度鳴いてて。
親とか兄弟とか探してたんでしょうね。ちょっと悪いことをしたな、といまだに思います。


賢い子でした。
トイレとかしつけすらいらなかった。

賢すぎてドアとか開けだすのにはちょっと参りましたけどね。
引き戸や窓ならともかく、ノブを押し下げるドアまで開けだすんだからもう。

それも最初はドアノブに飛びついてそのままその勢いで開ける形だったから、
押し開けるドアしか開けられなかったのに。

それが気が付けば引くドアも上手く体重をかけて開けるようになってね。
そのうちジャンプもしなくなりましたからね。

カラダ伸ばして手をかけて、カチャ、って。
しかも両手じゃなくて片手ですよ。猫の動きじゃねぇ。
背中のチャック明けたらちっさいオッサン出てくるんちゃうかと。

でも、初めて夜中にやられた時は心底怖かったなぁ。

ノブが動いてドアが開いて、
ちょっと隙間が開いて…そこに何もいないんですもん。

う、うわぁー、とか思ったところに足元ににゃーん、ですからね。
心臓によくないっちゅーに。


鍵っ子だった自分には、
待っててくれる存在がいるってのは嬉しかったですね。

最初の頃はワクワクした顔で玄関にいたのに、
だんだんめんどくさそうに出迎えてくれるようにはなりましたけどw

初めて体調不良で早退した時だったかな。
帰ってくるはずのない時間に帰ったもんだから、
知らない人かと思われたのか、尻尾ぼわぼわにして逃げ惑われたりもしました。


実家にいたころは自分が一番家にいる時間も長かったし、
一番自分に懐いてくれていたと思います。いつも一緒に寝てたし。

就職して実家を離れるとさすがにちょっと忘れられてゆくのが寂しかったな。

最初の頃は毎月帰ってたんですけどね。
やっぱりだんだんペースも落ちるじゃないですか。

初めて2か月間隔あけた時だったかなぁ。
玄関明けたらポカーン、とした顔して。
んで人のこと上から下まで2度見ですよ。

「えぇ?えぇえ??」みたいな顔で。

まぁワンテンポおいて、「あっ」みたいな顔して、
「いやいや大丈夫やで。ちゃんと知ってんねんで。」みたいな感じで、
誤魔化すようにすり寄ってきたときにはさすがに苦笑いするしかなかったです。

いや忘れてるやん。



いやー…
寂しいですね。

もう実家帰っても出迎えてはくれないんだな。
布団かぶっても何ももぐりこんでこないんだな。


親父が帰ると玄関で倒れていたのだそうです。
彼が最期に待っていたのは、誰だったのか。


自分だったらいいな、と思うと同時に、申し訳ないな、と。

明日なんて祝日じゃないですか。
普通だったらね。今から帰ればいい。

でもね。明日出張でね。
朝一で飛行機乗って東京行くのですよ。
休み潰してお仕事するのです。

帰りも飛行機なもんだから、実家に寄ることもない。


冷たい奴、ですよね。
ごめんなぁ。


楽しかったな。一緒にいた時間。
実家で一緒にいたのは10年くらいだったけどさ。

ああまで深く一緒に過ごした猫っていうのは、
たぶん、彼が最初で最後になるんだと思います。


写真探して待ち受けにでもしとこうかな。
でもなぁ。カメラ嫌いな子だったからなぁ。
可愛く写った写真が無いんだよな。ホントはちゃんと可愛いのに。



単純に、タイミングだったり、仕方ないことだったり、するんだとは思うんですが。

最近はなんだか、自分の大事なものとかひととか、必要なものとかひととか、
どんどん居なくなっていってしまうんだなぁ、と思ってしまいます。

寂しいなぁ。寂しい。