宇高航路にさよならを

2月13日。
その日飛び込んできたニュースは大変衝撃的なものでした。

宇高航路、廃止。

ちょうど100年前の1910年。
国鉄宇高連絡船により開設されたこの航路。

国鉄連絡船は瀬戸大橋開通と同時に廃止になったものの、
戦後参入した民間航路が、その後も今日まで運行を続けていました。

しかし高速道路の割引が始まると、そこに燃料費の高騰、景気の落ち込みと次々と逆風が。
そして去年3月からの高速1000円。これが完全にトドメとなってしまいました。


ほんの20年前まで、本州と四国の連絡といえばこのルートが主役。
それが、こんなにあっさり…。


まぁそういうわけで名残乗船してきたのであります。
同じ公共交通機関というフィールドで働く人間として、一方的ながら親近感はありましたし。
何より、高速1000円で大ダメージってのは他人事とは思えなかったのです。

しかしまぁ自分に何が出来るでもなく。
とりあえずさよならしに来るくらいがせいぜいなもんで。
それも最終日に来るほどのあれでもないのでこんな中途半端な日に。

高松駅から徒歩わずか。フェリー乗り場へ。
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現在この航路では宇高国道フェリー四国フェリーの2社が運航を行っています。
こちら側が四国フェリーの乗り場。

そして奥が宇高国道フェリーの乗り場となります。
宇野と高松、どちら側においても両社が交互に出航するダイヤになっています。
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瀬戸大橋がある時点で、フェリーなんてもう…くらいに思ってましたが、
驚くことに報道によれば高速割引開始前までは両社とも黒字を保っていたのだとか。

それがあっという間に共倒れ、っていうんだから、ちょっとなんか言葉が無いですよね。

両社が合併をして…っていう話もあったそうですが、その交渉も決裂したとか。
まぁ、この辺は…彼らの選択ってことなんでしょう。

安易に合併って言っても、それで収益を上げるためにはどう考えたって人は切らなきゃだめなわけで。
これから路頭に迷う人がいる以上は、やっぱりなかなかスムーズに話し合いも進まないでしょう。

統合したって赤字な程、なんて発言もありましたしね。
まぁ、どうにもならないんでしょう。

この乗り場なんか見てもお互いなんか対抗心あるみたいな雰囲気ですし。

国道フェリー側の乗り場にはコンビニが。
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航路が廃止になったら、このコンビニの経営も苦しくなりますね。

まぁ、会社が消える、輸送機関が消える、っていうのはそういうことですよね。
それそのものだけが消えるわけじゃない。
人も一緒に消えていくわけだから、当然その営みに必要だったものまで巻き添えになるわけですよ。

三木鉄道くらい何にもないとまた話は別だろうけどね。

自動改札機と、その横に立つは廃止のお知らせ。
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自動改札自体はもう使われていないようです。

コンビニ前で購入した390円の片道切符を片手に船内へ向かいます。

こくどう丸。
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国道フェリーの名の通り、この航路って国道30号の一部なんだそうで。
道が海の上ってどういうことやねん、って気もしますけど。

船内はこんな感じ。
暖房の効いた暖かい客室に
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吹きっさらしの寒い展望室
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そして最上部デッキ。
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双眼鏡もありますよ。
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船の上からこんなもん見たら即ゲロゲロゲーってなりそうです。
ていうか、今現在接岸してて微妙に傾いてるのがちょっと気持ち悪いくらいです。

それほど船の苦手な自分がわざわざ船に乗りに来るだなんてねぇ。
なんかもうわからんもんですね。

船内にはゲームコーナーも。
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いまどきこんなのはさすがに…w

そういえば所属船の中には漫画喫茶もあるとか。
一度乗ってみたいような気もするけど、1時間ではなぁ。

というかそもそもが残りひと月以下なんだから乗る機械なんざねぇ…。

出航してしばらくしてからうどん食べました。
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連絡船うどんとか有名だったそうですね。

車窓…じゃねぇな、船からだから船窓、か? 
とりあえずなんか島が見えました。
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灯台の上になんか書いてあります…

ズーム。
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鬼ヶ島。ほほう。

船内をふらふらしたり、テレビ見ながらボーっとしたり。
そうこうするうちに宇野の町並みが見えてきました。
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気がつけば外は曇り空から雨模様へ。
傘持ってきてないんだけどなぁ。

昔、一度だけこの航路に乗ったことがあります。

4年ほど前の春休みだったか夏休みだったか。
香川の母の実家に遊びに行くときに瀬戸大橋線が不通になりましてね。

マリンライナーが全車宇野行きになって、そこから代行フェリーに乗ったんですよ。
気が重かったなぁ、嫌いなフェリーに乗りたくもないのに乗らなきゃいけないってのは(笑)

乗る向きは正反対だけど、そういやあの日もこんな雨だったな、と。
そんなことを思い出していました。

とりあえずそれ以降、天候が悪くてもフェリーがあるから大丈夫、っていう、
最後の手段というか、命綱的な信頼感が頭のどこかにはありましたね。
まぁこれ以降、今回の乗船に至るまで一度も乗ることは無かったですが。


四国フェリーの専務さんが言ってました。
「公共交通とはいえ、慈善事業ではない」と。

その通りだと思います。
人々の足がどうとか、車が使えない人々がどうとか言いますけどもね。
そこにはそこで働く人々たちがいて、その人たち一人一人がそれぞれの生活があって、
そしてその生活を支えるためには、やっぱり、お金が必要なんですよね。



だからもう、採算が取れないっていうんなら、それは仕方ないと思うんですよ。
かつて代行輸送で一度乗っただけの人間が寂しいとかどうとか、そんなの言ったってね。



でも、出来ることなら何かしらの支援がなされては貰えないだろうか、とも思ってしまいます。
それが無いのなら無いで、せめて、
この先職場自体が消えてしまう従業員の人々に対して就業支援くらいは何とか、と…。
今、フェリー業界はあちこちで打撃を受けてます。
そんなご時勢に転職なんて言っても無茶じゃないか、と…。



でも、簡単に「支援を」というのも何だか、ですけど。

そもそもの原因が税金を投入した高速割引なのに、
それの影響で起こる事象にまで税金をつぎ込んでいたら、それこそキリがありません。
どれだけ税金を持っていくつもりなのかと。

しかし景気高揚のための政策で、
こうやって失業者が出てしまうってのもそれはそれでどうなのかという話。
果たしてそれは本当に景気対策になっているのかどうか。

高速1000円がこの失業者を補って余りあるほどの求人を生み出しているのなら、
結果としては問題も無いということになるのかもしれませんけどね。

現実はどうなんでしょうね。新卒採用もまだまだ苦しいなんて聞きますけど。



まぁとりあえずは、そんな風にいろいろなことを考えつつ1時間の道のりは終わったのです。
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たぶんこれが最後になるんでしょう。
その他の航路ならともかく、
瀬戸大橋線と完全に平行しているこの航路にわざわざ自分がやってくる理由は無いですし。



どうなるんでしょうね。これから。
宇野も、高松も。

航路が消えるとなると、影響は大きいように思いますけど。特に宇野において。
高速割引はこのマイナスを吹き飛ばすだけのプラスを本当に生み出せるんでしょうか。